あらためて自信をもって「こどもをまちで育てよう」~特別寄稿~
横浜市立大学 准教授 三輪律江
お散歩中に起きた大津の交通事故、とても悲しくショッキングでしたね。
当事者や関係者の方の悲痛な思いは計り知れず、全国の子どもを持つ保護者、子育て支援の方々にも衝撃を与えたと思います。私もその一人でした。この事故がきっかけで、子ども達の安全を願う気持ちが違った方向に進むのではないか、と危惧していました。でも皮肉なことに、保育士が入念に細心の注意を払いながらも実施している、子ども達の育ちのために欠かせない毎日のお散歩文化の存在が一定の知らしめられたことにもなったようです。
まち保育とは・・・
“まちにあるさまざまな資源を保育に活用し、まちでの出会いをどんどんつないで関係性を広げていくこと、そして、子どもを囲い込まず、場や機会を開き、身近な地域社会と一緒になって、まちで子どもが育っていく土壌づくりをすること”です。そして子どもをまちで育てようという「まち保育」の試みは、保護者や保育者以外の地域の人を巻き込んで、まち全体が子どもを育てる意識を生み、それはまちそのものが大きく育つことにつながります。
まちで育てる、町で育つ。
まちに出かけ、まちのさまざまな資源を活用し、まちにいるさまざまな人と触れ合いながら、「まちの子ども」として育っていくことで、おのずと、まちを舞台にして子どもが育つようになり、まちをよく知り、お気に入りの場所ができ、安心できる大人とも触れ合いながら育っていきます。
まちが育てる、まちが育つ。
そして子どもの姿がまちのあちらこちらに見られるようになれば、まちの住民が子どもたちに出会う機会が増え、出会いにより交流の層を厚くしていくことになります。そのことにより、自分の子どもや孫以外の「まちの子ども」の成長発達や安全に関心が及ぶようになり、声かけや見守りが活発になっていく、まちが成熟し「まちそのものが子どもを育てる」土壌ができあがっていく。
まち全体で子どもをみていこうとする姿勢は、大人も子どももお互いの存在を認め合いながら、共に暮らすまちへとつながり、犯罪や災害にも強いまちになっていくことが期待できるステージとなっていくはずです。
ゆっくりとまちは育っている。
この6/8(土)に行われた「わがまちの安心をみんなでつくりたい@市が尾」は保育士の方々が自らやりたいという思いで、その声かけに地元の方々などが集い、子ども達のお散歩に思いを馳せながら歩き、できそうな小さなアクションやアイディアをたくさんいただきました。
普段のお散歩途中に偶然遭遇して一緒に歩いたり、気づかって下さる方もいるというお話もあり、ここ数年の取り組みを経て、心強いコミュニティファンができ、十分にまちが育ってきたな、と感慨深いワークショップとなりました。ピッピの皆さんには、ぜひ自信をもって、今までの取り組みを糧にコミュニティファンを信じて、これからも子ども達をまちに開いてあげていって欲しいと思います。
*法人ニュースレターに特別に寄稿していただいた原稿を掲載しました