良い社会を作ろう!ポストコロナ、ポスト待機児童時代に

与野党問わず、子ども政策の充実のために新たな行政組織の創設すべきという主張が聞かれます。
子どもに関わる現場に携わる私たちは、この動きを歓迎したいと思いますが、単なる組織改変に終わることなく、財源の裏付けを持って必要な政策を立案・遂行する組織が創設されることを願います。

想像以上のスピードで社会が変わり始めていることは、福祉の現場を通して私たちも感じ取っています。必要とされている「新しい保育」を言語化することにもチャレンジしなければなりません。ここへ来てボトムアップの議論も活発化しています。
6月7日には、ピッピ親子サポートネットも参加する全国小規模保育協議会が中心となって立ち上げた「新しい保育イニシアチブ」による「ポスト待機児童時代到来!~あたらしい保育ビジョンを語る~」が開催されました。

パネラーのお一人汐見稔幸さん(日本保育学会会長)は、保育園はオアシスのような場所、障害児や外国籍の子どもには丁寧な配慮を持って接し、また、働いていてもいなくても誰でもが利用できる=皆保育であるべきだし、地域づくり機能をも担う、そのために必要なのは、まず「保育原理(やり方)」を変えることだと言います。
駒崎弘樹さん(全国小規模保育協議会理事長)も、同様に、保育園が自園の子だけでなく地域のすべての子どもたちに開かれた存在となり、自らコミュニティを生み出す装置となることや、ネットワークして機能する存在になると言ったコンセプトを提示されました。

でも、今のやり方にこだわると仕事は増えてしまう。ではどうすればいいのか?
汐見さんは、さらっと「運動会なんてやらない。それぞれの能力、違いが出るものは一切やらない。(インクルーシブをめざすのだから)」とおっしゃいます。さらに、「仕事や家庭の事情で、どうしても登園は10時、11時になるという家庭に対して、『なんとかなりませんか?』などと言ってませんか?」と、ドキッとする指摘も。私たちは、様々な場面で、無自覚に大人の都合・大人のペースを優先させていたかもしれません。

汐見さんは、外国につながる子どもや障害児を子ども同士で支え合う保育園の事例や、異年齢で支え合いながら人間形成を行うフランスのフレネ学校の事例も挙げて、子どもが主体的に遊び、学ぶ時間に切り替えていくための工夫をお話しくださいました。そして、「目の前のことに追われるて忙しい時も、ミッションを持っていれば知恵が出てくる、本来、時代に相応しく変わっていくことは面白いはずです」と、最大級のエールももらいました。

ピッピ親子サポートネットの設立趣意書には、「こどもたちがその子らしく育つ権利を保障され、大人たちは喜びを持って子育てを楽しめる、そんなコミュニティーをつくることは私たち大ぜいの願いです。」と謳っています。働いていてもいなくても預かる一時保育に積極的に取り組み、障害があってもなくても共に過ごす場「となりのいえ」や、他世代が集う「大場町みんなのいえ」を始め、アウトリーチや相談支援事業やフードシェアの活動も生まれました。パネラーの皆さんの話を私たちの実践に重ね、励まされたスタッフも多かったと思います。

そう、一歩一歩悩み迷いながらチャレンジしてきたことは間違っていなかった。「新しい保育」は、常に目の前の困ったに寄り添うことからすでに始まっていました。時代は、ポストコロナ、ポスト待機児童。当たり前のように良い社会を作ろうという時代がやってきたのだから、自信を持って進もう。
(若林 智子)